研究概要 |
化学ポテンシャル顕微鏡の開発にあたって,プローブ部分を試作した。ベースとして用いるために購入したプローブ顕微鏡は,熱拡散測定用の白金プローブ(マイクロサーマルアナライザ)を持つ。そこで、このプローブ形状を模して、酸素ポテンシャルプローブとして、0.3mmΦの白金線をヘアピン状に折り曲げたものを用い、この先端付近にイットリア安定化ジルコニアの粉末を加熱凝着させ、微細な酸素センサを形成した。この先端を導電性を持つ試料の表面に接触させ、プロープ基体の白金線と試料との間に発生する起電力を測定することで、Nernst式から表面の実効酸素ポテンシャルが得られると考えられる。そこで、予備実験として、セリア系酸素イオン導電体上に(La,Sr)CoO3緻密薄膜をレーザーアプレーション法によって製膜し、これを酸素電極とする電気化学セルを作製した。この表面に試作したプローブを接触させ、電極反応進行時の表面における酸素ポテンシャルの変化を計測した。この系の酸素電極反応では、電極表面での酸素の取り込み/放出が主な律速過程となることが他の実験から分かっている。このため、通電による分極に伴い、表面酸素ポテンシャルが気相との平衡からずれることが予想された。実験の結果、分極過電圧の増大に伴い、プローブに発生する起電力が増大した。これは表面酸素ポテンシャルのシフトを示している。同様の測定を、上記(La、Sr)CoO3電極の周囲に設けた集電用の白金ペースト上で試したが、この場合は観測される起電力がわずかであった。このことから、試作したプローブは試料表面の状態を反映していることがわかった。
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