研究概要 |
固体表面に吸着した酸素の化学ポテンシャルを測定するプローブを作製した。昨年度開発した手法,およびデータをもとに,プローブをさらに小型化するために,市販の走査プローブ顕微鏡用サーマルプローブ(約5μmφのPt線をV字型に折り曲げたもの)をベースとして利用することとした。この先端にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)微粒子を凝着させてることで表面酸素ポテンシャルプローブを形成した。YSZをコートしたプローブの平面分解能は約0.1〜0.5μm程度であり,通常のサーマルプローブとほぼ同等の値となった。このプローブ先端を,導電性を持つ試料の表面に接触させ,プローブ基体の白金線と試料との間に発生する起電力を測定することで,Nernst式から表面の実効酸素ポテンシャルが得られることになる。実際の測定では,さらに試料を高温に加熱する必要があるため,試料サイズは約3mm角までとした。また,試料加熱用のステージも,プローブおよび走査機構にダメージを与えないものである必要がある。われわれの試作した加熱ステージでは約500℃までの測定が可能であった。ただし,高温では熱によるゆらぎと思われる長周期のノイズが観測された。より高温での測定のためには,冷却の工夫が必要となろう。YSZ単結晶上に電極として金のグリッド(400メッシュ)を加熱付着させたものについて測定を試みたが,予想したよりも電極の起伏が大きく,走査機構の制限からうまく画像をとることが出来なかった。現在より起伏の小さな電極をフォトリソグラフィーによって作製することを試みている。
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