研究概要 |
繊維強化金属間化合物およびセラミック複合材料は次世代超高温材料として注目されているが脆さの克服が課題となっている。実用化に向けて,き裂の進展を阻止する高靭化メカニズムを導入する手法を開拓することは急務となっている。今年度は、主としてSiC/SiCおよびSiC繊維結合型複合材料を対象として,強度・靭性を低下させるモードIき裂進展を阻止して高靭化するために,「界面制御効果」と「マトリックス多重破断効果」について,解析と実験を行った。 主な成果は以下のように要約される。 (1)[界面制御効果] (a)界面剥離挙動は残留応力によって大きく異なり,繊維軸方向に引張の残留応力を持つ構成材は,それが破断すると界面剥離を促進し,圧縮の残留応力を持つ構成材は破断しても剥離を抑制する効果がある。 (b)界面が弱すぎると剥離が多く起こりすぎ,繊維への応力伝達効率の低下によって,複合材強度は低下するが,一方,界面が強すぎると形成される損傷により発生する応力集中でやはり複合材強度は低下する。 (c)最適界面強度は応力伝達効率と応力集中の兼ね合いで決まり,SiC/SiC複合材料では,約100-300MPaである。 (d)SiC/SiC複合材料では界面に炭素を被覆すると応力集中を減ずる効果で複合材強度は高くなる。 (2)「マトリックス多重破断効果」 (a)マトリックスにき裂を積極的に生じさせてき裂間隔を狭くすると,き裂先端のモードIエネルギー解放率のみならず,モードIIエネルギー解放率も低減させることができる。 (b)そのため,界面が極めて弱くとも,この現象を利用すると剥離を抑制できるので,応力伝達効率を上昇させ,複合材強度を上げることができる。 (c)SiC/SiC複合材では,PIP法などで形成されるマトリックスは多重破断現象を示すので,この効果により高強度を示す。
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