本年度は、レーザーAEシステムのさらなる高度化について検討を行った。まず復調器改良によるS/N比向上について検討した。現在開発中のレーザーAE計測システムは、レーザー干渉計はヘテロダイン型干渉計(He-Neレーザー)であり、約1MHzまでの帯域を有している。微小なAE信号を計測するためには、S/N比(信号雑音比)の向上が有効である。そこで復調器の改良を行うことにより、感度の向上を目指した。全面的に回路を見直して雑音の低減を図るとともに、周波数帯域を400kHzまで制限することによりS/N比を向上させた。シャープペンシル芯の圧折による擬似AE源による波形から、これら復調器の改良によりAE波形到達までの雑音が低減できることがわかった。 さらに、平均化計測によるS/N比向上について検討した。超音波計測においては、繰り返し計測を行い得られた信号を平均化することにより、S/N比の大幅な向上が可能である。しかし、AEが発生する現象は過渡的であるため、繰り返し計測を行うことはできない。そこで、レーザー干渉計を用いて多チャンネルの計測を近接した微小領域(約1mm)で行い、得られた信号を平均化処理することにより、過渡的な現象であるAE信号のS/N比の向上を図った。従来のPZTを用いて計測においては、変換子の大きさ(数mm)の平均的な振動を得ているので、このような多チャンネル計測を行い平均化することによっても従来のPZTによる計測に比べても、計測領域の大きさは問題とはならない。前述と同様に、シャープペンシル芯の圧折による擬似AE源によるAE波形から、この手法によっても、S/N比の向上が可能であることが示された。
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