研究概要 |
前年度までに,磁場中成形解析を行うために,粒子系モデルによる粒子挙動解析法の開発と,コセラ連続体理論による解析手法を開発し,その実験検証のために,磁性粒子の磁場の印加による配向過程や,圧縮中の挙動を実際に直接観察する手法を開発した.その結果,磁場が作用している場合と,そうでない場合の磁性粉末の挙動がかなり異なることが観察された.今年度はさらにこの点を種々の場合について詳細に観察し,同時に従来欠陥のあったコセラ連続体理論による解析手法の改良を行い,実際により近づけることができた.得られた主な成果は次の通りである. 1.磁場を圧縮方向に印加した場合の圧縮初期では,初期密度比が小さいとき(ρ=0.2)では粉体内部に柱状体のすべりと考えられる不連続な移動や,観察面の奥行き方向への移動が顕著である. 2.圧縮方向と垂直に磁場を印加した場合は,磁場方向と垂直方向から観察したとき,側壁付近の粉末の移動が小さく,摩擦の影響が大きい. 3.初期密度比が0.3のとき粉末挙動はほぼ連続的であり,磁場を印加した場合は,磁場を印加しない場合に比べて,キャビティー下部に近い粉末まで移動する. 4.圧縮後(ρ=0.4)においては,磁場を印加した場合の方が,磁場無しの場合に比べ上部での圧縮率が高い. 5.改良したコセラ連続体理論によるシミュレーションの結果,外部磁場を印加している時は,磁化された磁性粒子による磁場の影響はほとんどなく,一方磁性粒子が磁化された状態で外部磁場を0に設定したとき,粒子による磁場の影響が顕著である. 6.平均密度比0.4までの圧縮後の密度比分布は,粉末上部で密度比が高く,下部で密度比が低くなり,実験結果と定性的に一致している. 7.磁化容易軸の配向角については,磁場印加後に圧縮を行ったとき,初期状態で密度比を均一として解析を行った場合には,配向角はほとんど変化しないのに対し,初期状態で密度比分布を与えたときは配向が悪くなる.圧縮中に配向が悪くなるという結果は,実際に実験で確認されており,実験結果と一致している. 今後の課題として,次の点がある. 可視化実験では密度比0.4までの圧縮しか行っていないため,さらに圧縮が進行したときの,密度比分布の測定が必要である.粉末内部での局所的な粒子の回転については,実験的な観察はできていない.この点の実験的検討が必要がある.また,定量的に議論するためには,3次元的な解析が必要である.
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