研究概要 |
本研究では,目的の異なる二段階のガス窒化処理(優先窒化・窒化物皮膜形成)によって,高耐食性ナイトライドセラミックス(Mo窒化物)とナノメータサイズ粒子分散強化型金属(Mo-Ti合金)を複合化し,材料表面から内部へ向かって組織と耐食・強度特性を制御した三層構造を有する全く新しい高耐食性傾斜機能材料の開発を目指す.本年度は主に母材となる粒子分散強化型Mo-Ti合金の作製条件およびMo窒化物皮膜形成条件の最適化を行なった.以下にその主な結果を示す. 1.Mo-Ti合金を900℃〜1300℃で優先窒化処理すると,直径1.5nm〜15nmの円板状粒子が母相Moの{100}面上に析出することが分かった.また,優先窒化温度を1400℃以上にすると析出粒子の形態が棒状に変化することが明らかとなった.また,優先窒化による強化の機構は窒化温度1100℃を境に変化しており,低温側では転位による析出物のせん断機構,高温側では転位が析出物の周りに転位ループを残すオロワン機構であることを明らかにした. 2.Mo-Ti合金を950℃以下で窒化処理すると,試料表面に平行で均一なMo窒化物皮膜が成長する.この窒化物皮膜では,最表面にfcc構造のγ-Mo_2Nが,それより内部ではbct構造のβ-Mo_2Nが生成することを見い出した.特に,窒化物皮膜内部に生成するβ相は,{011}<011>型の極めて珍しい微細双晶で構成されていることを明らかにした.このβ相の双晶を積極的に利用することで皮膜に蓄積される応力を緩和することが可能であると考えられる.
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