本課題では、熱力学平衡計算及び分子軌道法計算という計算化学的手法を用いて、気相ダイオキシン類の熱力学的研究とその反応ダイナミクスを解析した。具体的な解明項目は以下の通りである。 1 半経験的分子軌道法PM3ハミルトニアンを用いたダイオキシン類の熱力学パラメータの算定 2 C-H-O系におけるジベンゾダイオキシン、ジベンゾフラン及びビフェニルの気相平衡計算 3 ダイオキシン類の生成・分解挙動に対する酸素及び塩化水素の影響の熱力学的考察 4 ダイオキシン類の生成・分解挙動に対するSO_2(g)添加効果の熱力学的考察 5 非経験的分子軌道法計算によるPCDDs生成反応に対する銅の触媒効果の解析 6 非経験的分子軌道法計算による銅触媒を考慮した高毒性PCDDs生成反応の最小エネルギー経路の算定 7 非経験的分子軌道法計算を用いた気固不均一系におけるポリ塩化ベンゼンからのPCBs生成の素反応経路の特定 8 非経験的分子軌道法計算を用いた気固不均一系におけるダイオキシン類前駆物質の塩化反応機構の解明 本課題の達成により、(a)高精度を有するダイオキシン類の熱力学パラメータの推算、(b)ダイオキシン類の分解を可能とする実操業条件の提唱、(c)インヒビタ類の添加によるダイオキシン類の抑制の有用性、(d)ダイオキシン類生成反応の支配因子の特定をすることができた。これらの学術的・工業的新規知見は、ダイオキシン類の発生・分解挙動の科学的解明、さらにはダイオキシン類の抑制・分解技術の確立に対して、重要な指針を示すものである。
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