研究概要 |
生体適合分子を基幹として構造化された集合組織におけるリパーゼを触媒とした脂肪酸エステル合成において,本年度は,組織形態別にリパーゼ活性の制御因子について主に検討し,以下の知見を得た. 1.集合組織溶液系 生体適合性の両親媒性成分としてシュガーエステルを用いた集合組織を調製し,Rhizopus delemarリパーゼによるオレイン酸とオクタノールのエステル合成を行い,リパーゼの反応活性が最大に発揮される有機相水分量の存在を明らかにした.特に,本系は相対的に低い有機相水分量の条件下で高い反応活性を示した.また,反応の進行の上で適切な両親媒性分子濃度と操作温度の存在も合わせて提示した. 研究成果は,第5回環太平洋生物化学工学会議(APBioChEC'99)並びに化学工学会第65年会にて公表した. 2.固定化ゲル組織系 生体適合分子としてレシチンを用いた集合組織に生体高分子であるゼラチンを添加することにより調製した有機ゲル組織にCandida rugosaリパーゼを固定化し,ラウリン酸とブタノールのエステル合成を行った.リパーゼの反応活性が最大に発揮される両親媒性分子濃度・ゼラチン濃度並びにゲル相水分量の存在を明らかにした.また,ゲル粒子内部の基質の拡散係数並びに分配係数を実験的に求め,数値的に定式化し,反応工学として展開する基礎を提示した. 研究成果は,第5回環太平洋生物化学工学会議(APBioChEC'99),化学工学会第31回秋季大会並びに第65年会にて公表した. 3.集合組織の微細構造・物性 電気伝導度測定による集合組織の微細構造並びに物性の検討を行った.実験方法の確立を目指し,イオン性のAOTを用いてモデル集合組織を調製し,集合組織溶媒の電気伝導度を測定した.電気伝導度が急激に増加する温度を見出し,温度により組織間の相互作用が変化することを示した.また,塩並びにタンパク質の可溶化によりその挙動は異なり,両者の可溶化が集合組織間の相互作用にそれぞれ影響を及ぼすことを示した. 研究成果は,化学工学会第31回秋季大会にて公表した.
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