研究概要 |
ゼオライトを疎水化することにより過酸化水素水存在下,有機物の酸化に高い活性と選択性を示す触媒を合成した.TS-1の他に,Ti-β,Ti-MWWを合成し,疎水性,酸性と活性,選択性の相関を調べた.3次元12員環細孔からなるβ構造のTi-βでは,10員環MFI構造のTS-1では酸化し得ない嵩高な環状化合物を酸化できた.しかし,Ti-bでは生成したエポキシドは開環してジオールを与えてしまった.これはTi-βの持つ酸性によるものと考えられたので,酸性の低いTi-βを合成することを試み,特に焼成後,第4級アンモニウムカチオンでイオン交換することにより,高い活性と選択性を示すTi-βが得られた.アルカリでイオン交換すると酸化活性が抑制され,一方,アンモニウムでイオン交換したものでは酸化反応中にアンモニウムが酸化分解し,効果が消滅した.TiをMWW構造の骨格に挿入することは長い間不可能とされてきたが,ホウ酸を結晶化助剤とすることにより,Ti-MWWの合成に成功した.層状前駆体を酸処理後,焼成することによりほとんど骨格外のTi種のないTi-MWWが合成できた.焼成後の酸処理では生成したアナターゼを除去できないことから,Ti-MWWは過酸化水素を酸化剤とした鎖状アルケンのエポキシ化に対してTS-1よりも高い活性を示した.また,ヘキサメチレンイミンをSDAに用いて合成したTi-MWWは結晶径の小さな六角形平板状で,針状粒子が凝集した形状を示すヘキサメチレンイミンを用いて合成したTi-MWWよりも活性が高いことが分かった.その原因は前者の結晶径が小さいことによるものと推定した.液相酸化反応活性に優れた,疎水性が高く,酸性を抑制した,小さな粒子径のチタノシリケートを実現する方法論が構築できた.
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