平成12年度までの遺伝学的解析から、菌体外プロテアーゼがA-28株の赤潮殺藻物質であることが示唆されていた。そこで、菌体外プロテアーゼが赤潮殺藻物質であることを確認するため、A-28株の菌体外プロテアーゼの精製を行った。菌体外プロテアーゼは、限外ろ過で濃縮したA-28株の培養上清から、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび調製用電気泳動の精製操作ののち、SDS-PAGE上で均一になるまで精製された。精製プロテアーゼの赤潮殺藻アッセイが行われ、赤潮殺藻活性が検出された。この結果から、菌体外プロテアーゼが確かに赤潮殺藻物質であることが証明された。A-28株の赤潮殺藻プロテアーゼ(プロテアーゼIと命名された)は分子量50kDaのモノマーであった。PMSF(フェニルメチルスルフォニルフルオライド)とDIP(ジイソプロピルフルオロリン酸)で活性が阻害されたことから、プロテアーゼIはセリンプロテアーゼであることが示された。プロテアーゼIをコードする遺伝子は、プロテアーゼIのN末端アミノ酸配列と内部のアミノ酸配列を基にDNAプローブを作成し、そのプローブを用いてクローニングされた。プロテアーゼIは、キチン分解性の海洋性細菌として分離されたAlteromonas sp. O-7株の菌体外セリンプロテアーゼAprIと高い相同性を示した。プロテアーゼIのC末端領域には、繰り返し配列が存在した。プロテアーゼIの成熟蛋白質はそのうちひとつの配列を含んでいた。
|