研究概要 |
Pseudoalteromonas sp. A-28株は、赤潮藻skeletonema costatumに対する殺滅活性をもっている。その機構を明らかにすることができれば、赤潮藻をピンポイントに攻撃する新しい生物農薬が開発できる可能性がある。そこで、本菌が細胞外に分泌する蛋白質について調べたところ、幾つかの蛋盲質にプロテアーゼ活性が認められた。まず、第一のプロテアーゼは、1,10-phenathrolineにより活性阻害を受けることから、メタルプロテアーゼであることがわかった。このメタルプロテアーゼは、empI遺伝子によりコードされていることがわかった。また、このメタルプロテアーゼをコードする遺伝子を大腸菌で発現させたところ、分子量38kDaのメタルプロテアーゼが菌体外に分泌生産されることが認められた。精製したプロテアーゼを赤潮藻skeletonema costatumに与えたところ、殺藻活性が検出された。この結果から、Pseudoalteromonas sp. A-28株が菌体外に生産するメタルプロテアーゼが確かに赤潮殺藻物質であることが証明された。さらに第2のプロテアーゼとして、A-28株がもう一つ赤潮を殺藻するプロテアーゼを細胞外に分泌することがわかった。このプロテアーゼは分子量50kDaのモノマーであった。PMSF(フェニルメチルスルフォニルフルオライド)とDIP(ジイソプロピルフルオロリン酸)で活性が阻害されたことから、このプロテアーゼはセリンプロテアーゼであることが示された。このセリンプロテアーゼをコードする遺伝子は、キチン分解活性をもつ海洋性細菌として分離されたAlteromonas sp. O-7株の菌体外セリンプロテアーゼAprIをコードする遺伝子と高い相同性を示した。
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