研究概要 |
前年度の研究計画実施の過程において,Pseudomonas putida KF715-D6株の前培養条件が、集菌後の菌体のTCE分解性能に大きな影響を及ぽすことを見い出した.そこで,TCE分解活性,残存活性(OD8の菌体濃度で,10ppmのTCE分解を6時間毎に繰り返し行った場合の初速度の比として定義),並びに分解容量に及ぽす前培養時の振盪速度及び培養時間(集菌のフェーズ)の効果に関して詳細な検討を行った.得られた結果を以下に示す.1)TCE分解の初期活性,残存活性並びに分解容量は,振盪速度80rpmで18時間培養し,対数増殖期に集菌した菌体を使用した場合に最大となった.2)水中におけるTCE分解活性は,130rpmより80rpmで培養した菌体の方が約2.5倍高い値を与えたが,無機塩を含む基本培地(BSM)中のTCE分解活性は130rpmでは水中より約3倍増加したが,80rpmでは約25%の増加に過ぎず,結果的にBSM中ではいずれの振盪速度で培養した菌体もほぼ等しい活性を示した.但し,残存活性は80rpmで培養した菌体の方が優っていた.3)130rpmで培養した菌体の水中におけるTCE分解の残存活性は10%程度であったが,80rpmで培養した菌体を分解培地としてBSM中で使用し,さらにBSM中で12〜18時間の賦活を行うことによって残存活性は80〜95%まで大幅に向上した.4)以上の諸条件下における遊離菌体のTCE分解性能は,アガロースミクロゲルビーズに固定化して使用した場合,ほぽ同じかむしろ若干向上する傾向を示した. バイオリアクターシステムの設計モデルを開発する目的で,TCE分解の経時変化のシミュレーションプログラムを作成し,菌体活性の低下を考慮した速度式を検討した.その結果,1)TCE分解速度は基質阻害の影響を受ける,2)菌体の失活速度はTCEの分解速度に比例する(比例定数はTCEの分解容量),と仮定した速度モデルによって,種々のTCE初濃度における分解の経時変化を良好に表現できることを明らかにした.現在,菌体の培養条件並びに分解培地が異なる速度データを収集し,速度解析によって得られた速度パラメータと分解性能との間の因果関係について検討中である.
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