研究概要 |
本研究は、エチレン生成酵素遺伝子を導入した組み換え光合成細菌を用いて、余剰汚泥を高温酸発酵させることにより得た液化余剰汚泥からエチレンを生成させることを目的としている。本年度得られた結果は以下のように要約される。 [余剰汚泥の高温液化の検討] 余剰汚泥の高温液化方法は実容積1.7リットルの撹拌型リアクターを用い、処理温度53℃、撹拌速度100rpmの条件で連続処理試験を行なった。汚泥供給量を段階的に上げることによりVSS容積負荷の検討を行なった。その結果、VSS容積負荷2g/l/dayでは生成有機酸濃度は約2,000mg/lであり、反応はガス化反応まで進んでいた。この時のVSS消化率及び供給VSS当たりのガス発生量はそれぞれ52%,215ml/gであり、バイオガス中のメタン含量は約58%であった。しかし、VSS容積負荷を5g/l/day以上にすると残存有機酸濃度は増加し、消化されたVSS当たりのメタン生成収率も240mlから155mlに低下した。VSS容積負荷8g/l/dayでは有機酸濃度は7,000mg/l(酢酸,800mg/l;プロピオン酸1,600mg/l)となり、生成ガス量も80ml/g of VSSと大幅に低下したが、メタン含量は51%であった。さらに、VSS容積負荷を12,14g/lと段階的に上げたが、有機酸濃度は一定しており、VSS消化率およびメタン生成収率もほぼ一定していた。 [液化余剰汚泥を用いた組み換え光合成細菌によるエチレンの生産] 上記の液化余剰汚泥を用いて、本来の目的である細菌のエチレン生成酵素遺伝子を組み換えた光合成細菌、Rhodobacter sphaeroides IFO12203(pRKEFE1)を培養した。培養条件は暗好気で30℃で行なった。しかしながら、昨年行なった市販低級脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)で得られた増殖、エチレン生産は観察されなかった。この原因は現在のところ不明である。
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