研究概要 |
本研究は、細菌Pseudomonas syringaeのエチレン生成酵素(efe)遺伝子を導入した組み換え光合成細菌Rhodobacter sphaeroides IFO12203(pRKEFE1)を用いて、余剰汚泥を高温酸発酵やラジカル反応を利用して液化した液化余剰汚泥からエチレンを生成させることを目的としている。本年度得られた結果は以下のように要約される。 1.余剰汚泥の高温酸発酵による液化最適条件の決定。昨年度に続いて、余剰汚泥の高温酸発酵のVSS容積負荷量を種々変えた連続培養を実施し、液化に適した最適条件を求めた。その結果、VSS容積負荷14g/l・d(滞留時間1.8日)が達成された。この時のVSS消化率は43%で、有機酸濃度7,000mg/l(酢酸、3,800mg/l、プロピオン酸、1,600mg/l)となり、生成メタン含量は51%であった。 2.濃縮余剰汚泥のフェントン反応による液化。5,000mg/lに濃縮した濃縮汚泥20mlに対して30%過酸化水素0.75ml(終濃度1.1%)、2g/lのFeSO4溶液0.75mlを添加し、25℃,180rpmで3日間反応させた。その結果、20%の無機灰分を差し引くと、MLVSSは98.4%減少した。しかし、この条件をもとに5リットル容発酵槽(実容積3リットル)を用いてスケールアップしたが、MLVSSは66%の減少にとどまった。 3.高温酸発酵とフェントン反応で液化した余剰汚泥を用いた組み換え光合成細菌によるエチレン生産の培養工学的研究。光合成細菌の培養条件は暗好気振とう培養、30℃で行った。その結果、高温酸発酵液化余剰汚泥ではエチレンの生産が認められたが、フェントン反応を利用した液化余剰汚泥からはエチレンの生産が認められなかった。最高のエチレン生産速度は50nlエチレン/ml培養液/hr/OD610で、市販低級脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)混合液で得られた120nlエチレン/ml/hr/OD610の42%であった。
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