研究課題/領域番号 |
11555227
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
浅野 泰一 有明工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (80311108)
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研究分担者 |
田部井 久男 NTTアドバンステクノロジ株式会社, 先端基盤技術事業部・デバイス技術部・材料部門, 部門長
今任 稔彦 九州大学, 大学院・工学研究科・化学システム工学専攻, 教授 (50117066)
正留 隆 有明工業高等専門学校, 物質工学科, 助教授 (30190341)
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キーワード | 内分泌かく乱物質 / 表面プラズモンセンサ / フィールド計測 / ポリ塩化ビニル膜 / モバイル型センサ |
研究概要 |
1.現状の表面プラズモン共鳴(SPR)計測法では計測の都度、センサーにマッチングオイルを塗らなければならない。このような計測操作では迅速を要求されるフィールド計測に馴染まないため、マッチングオイルの薄膜化を実現することが、表面プラズモン計測法を化学センサー化し、モバイル型SPRセンサーを開発するために解決しなければならない重要な問題の一つである。本研究は、携帯用SPRセンサーを開発するための一過程として、上記問題点の解決を目的としている。 2.マッチングオイルに代わる高分子膜を作成するための高分子としては、室温硬化(RTV)シリコンゴム、シリコンオイル、ポリ塩化ビニル(PVC)を用いた。これらの高分子を膜化し、センサーに張り付け、水を試料としてSPR信号が得られるかを検討した。また、膜厚0.1mmのシリコン膜を用いた場合にも、同様にしてSPR信号が得られるかを調べた。さらに、Self-Assembly膜作製法によってヒトアルブミンを金表面に固定化したSPRセンサを試作し、その抗ヒトアルブミンに対する応答特性において、SPR信号が得られた高分子膜を用いた場合と従来のマッチングオイルを用いた場合との比較を行った。 3.検討した5種類のシリコンオイルは、全て膜化出来なかった。室温硬化(RIV)シリコンゴムの場合は、RTVゴムとして1.5gを用いた場合、テトラヒドロフラン(THF)溶液に溶解することにより、キャスト法により膜化できた。しかしながら、この場合には、SPR信号を得ることができなかった。また、シリコン膜を用いた場合にもSPR信号を得ることができなかった。これらに対して、可塑化PVC膜を用いた場合には、予備的検討の結果、SPR信号を検出できることがわかった。そこで、マッチングオイルの屈折率に等しい可塑剤を用いた可塑化PVC膜を作製するために2種類の可塑剤を混合してマッチングオイルの屈折率に近い組成を検討したところ、フタル酸ジオクチル(DOP)とりん酸トリオクチル(TCP)を重量比で1:1で混合した場合が、マッチングオイルの屈折率にほぼ等しいことがわかった。そこで、DOP(0.5g)とTCP(0.5g)を混合した可塑剤を用い、PVCの量を0.05g、0.1g、0.2gと変化させたPVC膜作製を試みた。その結果、PVCの量が0.05gと0.1gの場合ではPVC膜を得ることができなかったが、PVCの量が0.2gの場合には、PVC膜を得ることができた。そこで、このPVC膜を用いてSelf-Assembly膜作製法によってヒトアルブミンを金表面に固定化したSPRセンサーを作製し、その抗ヒトアルブミンに対するSPRセンサ応答性において、可塑化PVC膜を用いた場合と従来のマッチングオイルを用いた場合との比較を行った。可塑化PVC膜を用いた場合のSPRセンサーの応答特性は、マッチングオイルを用いた場合のSPRセンサの応答特性と類似していることがわかった。この結果は、マッチングオイルの代わりに可塑化PVC膜を用いたSPR計測法のモバイル計測への応用の可能性を示唆している。
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