研究概要 |
本研究では,研究計画に沿ってスピネル型化合物を中心に、蛍光表示パネル用(VFD)およびプラズマディスプレイパネル(PDP)用蛍光体としての実用化の可能性について検討してきた。本年度は「酸化物蛍光体」として研究成果の部を特許化し、分担者の所属するノリタケ・カンパニー・リミテッドにおいて実装試験を実施している。 ・本年度ではパイロクロア構造を有する新規蛍光体(化学組成 ; A_2B_2O_7)に着目し,その結晶構造内において,Aイオンに発光イオン,Bイオンと酸素原子(O)とがつくる骨格に電子伝導性を付与したVFD用の蛍光体の材料設計について検討し、その成果を取り纏めた。具体的には、Aイオンには希土類元素イオン,BイオンにはTi,もしくはSnによる材料組成の制御を図った。出発原料としてLn_2O_3(Ln:希土類元素),MO_2(M=Ti or Sn)を用い,パイロクロア構造を有した母体材料が単一相になる合成条件を決定し,それぞれに得られた発光体については、紫外・可視励起発光スペクトル、カソードルミネッセンスをはじめとした各種発光特性を評価し,母体材料へ付活する希土類イオン濃度の最適化を図った。加えて、電気的性質についてはホール測定装置等を用いた評価により、電子線励起による蛍光体の実用化のための材料設計に供した. ・プラズマディスプレイパネル(PDP)用蛍光体としては,スピネル関連構造を有するマグネットプランバイト型酸化物に着目し,結晶化学的考察を踏まえて輝度の改善、耐熱性などの向上について検討した。その結果、計算機シミュレーションによって高輝度化のための構造及び組成の最適化を検討すると共に、その合成プロセスを検討することにより、実用化水準の蛍光体の作製が可能なことを明らかにした。さらに、本年度は、母体材料としてホウ酸塩を対象に,147nmの励起エネルギーを吸収するアニオン部(BO_3)と可視光を放射するカチオン部とを組み合わせた各種蛍光体の合成を行うと共に、真空紫外線領域の励起で極めて高い発光効率をもつ赤色蛍光体GdBO_3 : Eu^<3+>の低温合成の重要性について指摘した。
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