研究概要 |
本年度は、(ZnO)_mIn_2O_3(m=自然数)において、Znに対する2価金属(Co,Mg),Inに対する3価金属(Y,Fe)の置換により、電子移動度の増加を試みた。この置換法はいわゆる同形置換であるが、置換量の増加に対する結晶格子の変形の仕方に一定の傾向が見られる。すなわち、Znよりも小さい陽イオンまたはInよりも大きい陽イオンを置換すると、a軸長は増加するのに対し、c軸長は減少する。また、イオンサイズが逆の場合にはa,c軸長ともに減少する。そして、前者の場合に限って移動度の増加が見られ、しかも最大移動度を与える最適置換量が存在することが明らかになった。Rietveld解析の結果、構造中の置換位置が変化する近傍の置換量で最大移動度を示すことが判明した。移動度増加とともにゼーベック係数も最大値を示すのに対し、導電率は若干低下するだけ、また熱伝導率は30〜50%低下させられるため、全体として熱電性能指数Zは向上した。今年度までに得られた最大のZは1000Kで1.5x10^<-4>K^<-1>であった。 また、酸素を原子番号の大きい硫黄に置き換えることにより、共有結合性の増加にもとづく移動度の増加を試みた。硫化物系も酸化物とは異なる層状構造を持っており、比較的導電率は高いことが分かった。しかし、硫黄層間が弱いファンデルワールス結合であるために、異方性が強く、配向セラミックス化が必要であった。そこで、ZnIn2S4の板状晶粉末を合成し、これを1軸加圧成形・焼結して高配向セラミックスの作製に成功した。これにより、c面に沿って高い熱電特性を示すことが明らかとなった。
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