我々は、熱電特性の向上を目的として層状構造を有するホモロガス化合物(ZnO)_5In_2O_3に金属元素の置換を試み、結晶構造および熱電特性を評価した。その結果、2価ではZnイオンに対してMgおよびCoイオン、3価ではInイオンに対してYイオンの置換において置換量の少ない領域でSeebeck係数の極大に伴う熱電特性の向上がみられ、YをInに対して3%置換した化合物において、この系における熱電変換性能指数の最高値Z=1.3×10^<-4>K^<-1>(1200K)という酸化物としては非常に良好な値を得た。また室温においてホール効果測定(van der Pauw法)により得たキャリア濃度およびホール移動度の置換量依存性を見ると、各置換体においてSeebeck係数の極大値を示す組成においてホール移動度の極大値を示すことがわかった。このことから、Seebeck係数の極大はこのホール移動度の増加によりもたらされるものと考えられる。また、熱電特性のさらなる向上を目指して、Mg^<2+>とY^<3+>、Co^<2+>とY^<3+>をそれぞれ同時置換したところ、置換量の少ない組成において、ホール移動度の増加に伴うと思われるSeebeck係数の極大値が得られた。元素置換によってその熱電特性が向上した場合に共通して、格子定数は置換量の増加に伴って六方晶系のa軸が伸び、c軸が縮むという特異な変化を示した。Rietveld解析の結果によると、この特異な変化はIn-O層中の金属元素(M(1))と酸素イオンとの結合距離が長くなり、(ZnIn)-O層中では正四面体が歪むことにより、全体としてc軸方向に縮むことに起因していることが明らかになった。
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