近年、黒鉛材料を負極に用いたリチウム二次電池は高出力密度を有し、リチウム金属負極と比較して安全性に富むことから、盛んに研究され実用化されるに至った。現在でもさらなる性能向上のため黒鉛以外の炭素材料負極の研究開発は国内外で勢力的に行われている。炭素材料の電気化学特性を詳細に調べるためには粘結剤などを用いない電極の作製が重要である。そこで、昨年度の研究ではプラズマ化学気相析出法(CVD)を用いてsp^2系炭素薄膜の作製を行った。本年度はその薄膜をリチウム二次電池用負極として用い、リチウムイオンの挿入脱離機構を種々の電気化学的手法により調べた。その結果、 1) リチウムイオンの挿入サイトは二つ以上存在し、挿入時にはまず結晶性の良い炭素層間に侵入し、その後、アモルファス層へ移動することを明確にした。また、脱離時には結晶性の良い炭素層間からリチウムイオンは優先的に脱離することが明確となった。 2) 本炭素薄膜にリチウムイオンが挿入可能な容量は印可電力が低いほど増大することが明確となった。これは、印可電力の増大に伴い、炭素薄膜中の結晶相が増加するためであることも分かった。 3) 本炭素薄膜は炭酸プロピレン系電解液中でもリチウムイオンの挿入脱離が可能であることが分かった。しかし、炭酸エチレン系電解液と比較すると、その容量は低いことも明らかとなった。 4) 炭素薄膜をNF_3プラズマ中で表面修飾を行い、電気化学特性を調べ、被膜形成機構に関する知見を得た。
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