研究概要 |
環式カルバミン酸は従来より医薬,農薬の基本骨格をなす代表的な複素環化合物として知られている。この点に着目し,我々のグループでは,効率のよい環式カルバミン酸の合成法を開発を目的として研究を進めている。 本研究では,これらの反応のうち,とりわけ,アレン結合をもつ4-vinylidene-2-oxazolidinone 1を医薬品リード化合物合成の鍵中間体として利用することを集中的に検討した。 N-Tosyl-およびN-benzoy1-4-Vinylidene-2-oxazolidinone 1は工業原料である2-butyn-1,4-diolのビスカルバミン酸への変換,次いでパラジウム触媒による環化反応により高収率で簡単に得ることが出来る。研究の将来的な展望のうえからも,我々が開発した本法を礎にして、2-butyn-1,4-diolのC1、C4位にの多くの置換基を導入し、1に多様性を持たせることを検討した。その結果、置換基の種類に関係なく1が高収率で得られることが判明した。、また非対称置換体の場合、置換様式により興味深い位置選択性も示すことを発見した。 1はオレフィンの電子的性質により,3種類の異なった環化反応をすることが分かった。メチルビニルケトンやアクロレインなどの極端に電子欠損のオレフィンとはアレンC_1-C_2炭素上で[2+4]付加環化をする。一方,他の多くの(中程度)電子欠損オレフィンやスチレン,フェニルアセチレンなどとはアレンC_2-C_3炭素上で[2+2]環化を行いメチレンシクロブタン骨格を与える。また,電子過剰オレフィン、例えばビニルエーテル類との反応では,トシル基のNからC2への1,3-転位、その結果生成する1-アザジエンヘのビニルエーテル類の[2+4]付加環化を経過して生じたと思われるテトラヒドロピリジンが高収率で得られることを発見した。これら、3種類の反応はいづれも新規で画期的な成果である。
|