研究概要 |
環式カルバミン酸は従来より医薬,農薬の基本骨格をなす代表的な複素環化合物として知られている。この点に着目し,我々のグループでは,効率のよい環式カルバミン酸の合成法を開発を目的として研究を進めている。 本研究では,これらの反応のうち,とりわけ,アレン結合をもつ4-vinylidene-2-oxazolidinone 1を医薬品リード化合物合成の鍵中間体として利用することを集中的に検討した。 アレンカーバメート1は各種オレフィンと単に80-100℃に加熱するだけで容易に環化付加反応をする。その反応挙動はあたかもカメレオンのごとく,反応相手のオレフィンの電子的性質により,3種類の異なった環化反応をする。メチルビニルケトンやアクロレインなどの極端に電子欠損のオレフインとはアレンC_1-C_2炭素上で[2+4]付加環化をする。一方,他の多くの(中程度)電子欠損オレフィン(例えばアクリル酸メチルやアクリルアミド)やスチレン,フェニルアセチレン,1,3-ブタジエンなどとはアレンC_2-C_3炭素上で[2+2]環化を行いメチレンシクロブタン骨格を与える。また,電子過剰オレフィン、例えばビニルエーテルやフランとの反応では,トシル基のNからC_2への1,3-転位、その結果生成する1-アザジエンへのビニルエーテル類の[2+4]付加環化を経過して生じたと思われるテトラヒドロピリジンが高収率で得られることを発見した。更に,同様の[2+4]付加環化反応がアリルシランでも進行することも分かった。これら、3種類の反応はいづれも新規で画期的な成果である。
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