研究概要 |
セルロース、アミロースの3,5-ジメチルフェニカルバメート誘導体は高い光学分割能を有し、HPLC用のキラル固定相(CSP)として有用である。また、セルロースやアミロース以外の多糖についてもその光学分割能が報告され、多糖の構造と光学分割能との相関に興味がもたれる。そこで、本研究では高い立体規則性が期待される無水糖の開環重合として1,6-アンヒドロ-β-D-ヘキソピラノースのカチオン重合を行い、得られた多糖をカルバメート誘導体とし、そのCSPとしての光学分割能について明らかにした。 1,6-アンヒドロ-2,3,4-トリ-O-アリル-β-D-グリコピラノース(1)のカチオン重合は溶媒として乾燥塩化メチレン、開始剤としてBF_3・OEt_2を使用し、0℃、窒素雰囲気下で80時間行った。1の重合で得られるポリマーはNMRの構造解析から1,6-α結合でさらに分岐のない立体規則性のデキストラントリアリル誘導体2であった。脱保護はRh錯体を用いたプロペニル基への異性化後、酸により加水分解を行いデキストラン(4)を得た。 光学分割剤への応用は4の3,5-ジメチルフェニルカルバメート化により5を得た。100量体および20量体と分子量の異なる多糖誘導体を用いた分割実験は溶離液としてヘキサン/IPAとし、ラセミ体としてトレガー塩基、ベンザインなどを用いた。4のトリス(3,5-ジメチルフェニルカルバメート)誘導体をCSPとした科学分割では、ベンザインに対し完全分割を示し、その分離係数はα=1.34であった。多糖誘導体の重合度による分割能の差は顕著であり、100量体のCSPの分割係数は何れのラセミ体の場合においても20量体よりも大きい値を示した。
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