研究概要 |
1)重合後に脱離が可能な置換基であるアリル基を有する1,6-無水糖である1,6-アンヒドロ-2,3,4-トリ-ο-アリル-β-D-グルコピラノースを合成し、その開環重合を一般的なカチオン開始剤である三フッ化ホウ素エーテル錯体を用いて行うと、主鎖が(1→6)-α-結合により糖ユニットが連結された立体規則性多糖、(1→6)-2,3,4-トリ-ο-アリル-α-D-グルコピラナンが得られた。また、脱アリル化反応はPd/Cにより完全に進行し、立体規則性の(1→6)-α-D-グルコピラナンが得られた。 2)(1→6)-α-D-グルコピラナンおよび(1→6)-α-D-マンノピラナンを不斉認識材料であるキラル固定相(CSP)への応用を行った。これら2種類の多糖と3,5-ジメチルフェニルイソシアネートおよび3,5-ジクロロフェニルイソシアネートの反応により、2-、3-および4-位に3,5-ジメチルフェニルカルバメートおよび3,5-ジクロロフェニルカルバメート化された多糖誘導体を合成した。合成した4種類の多糖誘導体を多孔性シリカゲルに吸着させたCSPを調製し、液体クロマトグラフィーによるラセミ化合物の光学分割実験を行い、これらのCSPの性能を評価した。それらのCSPはベンゾイン、トレガー塩基に対し大きな分割能を示し、置換基および多糖構造の違いにより不斉認識能が異なることを明らかにした。また、(1→6)-α-D-マンノピラナンのジクロロフェニルカルバメート誘導体は本研究において最も高い分子認識能を示し、さらに、ラセミ体のベンゾインと相互作用し、各エナンチオマーに由来するピークの分裂がNMRスペクトルにより観測された。このことは、多糖カルバメート誘導体が溶液中でも不斉認識が可能であり、CSPと共にキラルシフト試薬として有用であることを示唆している。
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