研究概要 |
本研究では、フッ素系高分子の超薄膜化を目指すため、ラングミュア-ブロジェット(LB)法を利用した新規なフッ素系高分子LB膜を構築し、超薄膜における表面特性の発現や潤滑特性について重点的な検討を加え、回転磁気記録媒体であるハードディスクの潤滑膜としての応用展開を富士電機(株)松本工場材料研究部と共同で開発に当たることを目的とした。 (1)フッ素系両親媒性モノマー及びポリマーの分子設計・合成 すでに優れた凝縮単分子膜を形成することが明らかなN-ドデシルアクリルアミドポリマーを基本骨格に種々のフッ化アルキル鎮を持つ高分子両親媒性化合物を新規に合成した。 (2)フッ素系高分子LB膜の表面特性 フッ素系高分子LB膜の動摩擦係数はフッ化アルキル鎮長および高分子量の増加と共に減少することを明らかにした。 (3)ハードディスク上のフッ素系高分子LB膜の摩擦特性評価 実際のハードディスク基板上にフッ素系モノマーおよびポリマーLB膜を作製し、実用的な検討を行った。具体的には実際のハードディスクの使用とほぼ等しいハードディスクの回転・停止の繰り返し(constant start stop)実験、耐久試験や回転起動時に発生する静摩擦係数の測定を行った。2万回のCSS実験の結果、3層以上累積したLB膜ではCSS実験をパスし、平均摩擦係数が1.1となった。しかし、高温多湿(40℃,80%)および低温乾燥(5℃,10%)条件下のCSS実験では、結晶化のため耐久性が低下することが明らかとなった。 (4)炭化水素系及びフッ化炭素系アクリルアミド共重合体の調製及び摩擦特性 水面上単分子膜挙動および摩擦特性は共重合体組成に強く依存する事が明らかとなった。フッ化炭素鎮の高い摩擦係数は柔軟性の高い炭化水素鎮の導入により減少することが示された。 本研究を通してフッ素系モノマー及びポリマーLB膜のハードディスク用潤滑膜としての性能を明らかにした。
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