アセタールは酸性条件下で加水分解することが知られている。このような分解反応を利用して、光酸発生剤の存在下にアセタールの骨格変化を溶解性の差に誘導する試みは、フォトレジスと分野では行われてきた。本研究では、アセタール骨格をポリイミドの主鎖に導入して、光があたると主鎖が切断するようにした。すなわち、ポジ形のレジストとして機能する。さらに、この樹脂を使用した後の廃材も酸分解するので、環境に優しい材料でとなる。まず、アセタール構造を含むポリイミドモノマーであるジアミン体の合成を行った。新規な構造として、ジフェニルベンザル基を有するジアミンの合成を行ったが、このものの結晶性が以上に低く、多くの困難を伴った。一方、ジアミンを経由しない方法として、イミド骨格を有するビフェノールとベンザルクロリドとの反応の可能性も検討したが、この方法では高重合体が得られないことがわかった。感光性を直接担う光酸発生剤として、長波長領域に吸収のあるものを合成して使用していたが、発生する酸がスルホン酸であり、けっして強力な酸であるとは言い難かった。そこで、新たに強酸であるフッ化ホウ素酸が発生する光酸発生剤を合成した。新規なモノマーとしてトリフルオロメチル基をオルト位に導入したベンズアルデヒドから出発してp-ニトロフェニルアセタール構造を構築し、ジアミノ体へ還元して合成した。新規なアセタールを有するジアミンと種々のテトラカルポン酸二無水物との反応でポリアミド酸を得、さらにアセタール構造を含むポリイミドフィルムを得た。得られてフィルムは有機溶媒に溶解するため、ポリイミドで直接フィルムを作製できる。得られたフィルムにg線を使用してパターニングを行ったところ良好なパターンを得ることができた。つぎに、アセタールを有するジアミンとトリメリット酸クロリドとの反応で、アミドー酸無水物モノマーを新たに合成し、種々のジアミンと反応させてポリアミド酸を得、さらにアセタール構造を含むポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドは良好な耐熱性を有し、さらに有機溶媒に可溶なことから、簡便に製膜してパターンニングできる材料を作製できた。
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