研究概要 |
本研究は,超音速燃焼流において速度・温度・濃度の同時計測を行うことができる,新しい非接触光学計測法を開発することを目的とした。半導体レーザー光に対するH_2Oによる光吸収法の適用を図り,超音速燃焼計測技術としての実用化を目指した研究を行った。 半導体レーザーとして波長1.393μmを中心波長とするInGaSaPレーザを選定した。予想される温度およびH_2O濃度範囲におけるH_2Oの最適吸収線を調べた結果,1300K-2000Kおよび300K-1300Kの温度範囲に対して,2本の吸収線の異なる組み合わせを最適吸収線として選定した。 米国の研究協力者と共同で,半導体レーザー光源部の制御系,受光部および計測・制御コードの開発を行うと共に,光ファイバー光学系および受光素子のシステムとしてのマッチング図った。さらに,東北大学流体科学研究所の超音速燃焼風洞において,超音速流での水素火炎安定化が可能な空気吸い込み型ストラット保炎器を風洞測定部に設置し,後流燃焼域の測定を行うためのレーザー光通過窓部を設計製作して燃焼・計測試験を行った。 超音速風洞観測部にレーザー光を導入する窓材の選定,火炎からの赤外輻射の影響を取り除くピンホールの設置,測定空間以外のレーザー光路を窒素バージすることにより,測定精度の向上を図った。これらを用いて,超音速空気流に対する非燃焼時および燃焼時の計測試験を行った結果,非燃焼時には,速度および温度は何ら補正を行うことなく数値予測された値と一致するデータが得られた。H_2O濃度は,風洞予熱装置に含まれる水分濃度を差し引くことで良好な結果が得られた。燃焼時においても,レーザー流速計によって測定された平均流速と一致し,H_2O濃度も非燃焼時と同様の補正を加えることで良好な結果が得られた。以上により,本研究によって開発されたシステムは超音速燃焼流の速度・温度・濃度の同時計測が可能な非接触光学計測システムであることが確かめられた。
|