研究概要 |
本研究では、電磁プラズマ加速アークジェット発生装置を用いて、キロアンペアの大電流放電によって、溶融チタン電極から供給される微粒子と窒素ガスプラズマとの化学反応により、窒化チタンセラミックス膜の生成を行った。チタン陰極の直径は6,8,10mmと可変であり、放電電流は5から12kA、放電持続時間は0.6msec、窒素ガス流量は2.5g/sであった。 陰極径10mm、作動パルス回数50回、放電電流10kAまたは12kAの時、基板表面は全面にわたってTiN特有の黄金色に変化した。また、陰極径6mmでは皮膜表面の凹凸は急激に増加し粗大粒子の付着も見られた。直径6mmの場合の膜厚は40μm、直径10mmの場合は約3μmであった。いずれの皮膜においても、基板表面に皮膜がほぼ均一な層状に堆積し、皮膜内部には一般的なプラズマ溶射皮膜に観察されるような直径数μm級の気孔は観察されなかった。放電時間当たりの堆積速度は8000μm/minに達し、電磁加速プラズマ装置がPVD法並の緻密質皮膜をPVD法に比べ高速に成膜できることがわかった。 さらに、皮膜の組成は陰極径に大きく依存することがわかった。陰極径6mmの場合の組成はTiN,Ti_2Nや未反応Tiの混層であったが、陰極直径の増加と共にTiNの比率は増加し、陰極径10mmの場合ではほぼTiN単層の皮膜が得られた。同時に成膜実験前後のチタン供給量は、直径10mmでは直径6mmの場合の約1/5となり、このようなチタン供給量の適正化により皮膜の窒化が進行したと考えられる。
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