研究概要 |
水管理法の基本的な枠組みを作るために,また,深水栽培における施肥方法を確立するために,3年間にわたり,宮城県農業短期大学の水田で栽培実験を行った.2001年は,異なる割合で被覆型緩効性肥料と化成肥料とを混ぜた2肥料区を設けた.5月12日に葉齢5.6の苗を1株3本,30cm×15cmに田植えし,移植後21日目から最上位展開葉のカラーを目安に水位を上げる深水区と,通常の水管理をする慣行区とを設けた.また,深水区で,最高分げつ期に落水する深水落水区を設け,水管理の多様性の検討をした.移植後21日目から,1週ごとに生育調査を行い,収穫期となった9月12日に刈り取り,収量調査を行った.また,群落としての生長を解析するために,最高分げつ期と穂孕み期,出穂期,穂揃い期に層別刈り取りを行った.その結果,施肥法に関わらず,深水区では草丈が慣行区より高く推移した.各時期の草高は深水区の方が高く,群落の構造としては,慣行区で見られる葉群の階層が上に約10cmずつシフトした状態で,昨年同様の結果が得られた.その傾向は最高分げつ期前から認められたが,深水区でこの時期に落水した場合,穂孕み期の群落は慣行区と似た葉群分布となった.収量には被覆型緩効性肥料の効果が認められた.また,昨年同様,深水栽培の農家水田を調べ,聞き取りにより情報を集めた.出穂前40日頃に水を落とした群落では,下葉が少なく,本実験の深水落水区とでは差が見られた.落水時期,落水後の管理などに今後さらに検討すべき問題があることが明らかとなった.さらに,3年間の実験の結果をまとめ,それを基に,田植え後早い時期から深水にする従来の方法と,この実験の過程で新たに考案した収量も重視する7月中下旬から貯水する方法との2タイプについて,水管理法の枠組みを検討し直し,水利学的な考察を深めた.
|