研究概要 |
本研究の目的は、(1)ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkaniiの生産する天然のエチレン生合成阻害剤リゾビトキシン(RT)に注目し、その生合成経路を生化学・遺伝学的に解明すること、(2)そのリゾビトキシン生産遺伝子群の導入によってリゾビトキシン生合成能を付与した有用細菌を作出することにある。平成12年度は、以下のような研究成果が得られた。リゾビトキシン生合成に関与すると推定される遺伝子群(rtxA,OFR1,ORF2,ORF3)を削ったLarge deletion mutant USDA94delta :: omegalはリゾビトキシン(RT)、ジヒドロリゾビトキシン(DRT)、セリノール生産能を失ったが、対応する領域を持った広宿主域プラスミドpGPSF1を導入したところ、全ての上記化合物の生産能が回復した。そこで、pGPSF1上のrtxA,OFR1,ORF2,ORF3をカナマイシンカセットで破壊したところ、rtxA遺伝子のN末側がセリノール合成、rtxA遺伝子のC末側がDRT合成、ORF1はRT合成に関与することが推定された。特に、ORF1は膜結合性のdesaturaseと相同性があり、DRTに二重結合を導入しRTを生成するDRT desaturaseであると考えられたので、rtxC遺伝子と名付けた。中間体や前駆物質と推定される各種化合物を野生株USDA94の細胞に投与した実験も行い、上記の遺伝子破壊の知見からRT生合成系の推定を行い、RT合成には少なくとも、rtxAとrtxCが必須であることを明らかにした。また、異種変異エチレンレセプターCm-ERS1/H70Aをマメ科モデル植物ミヤコグサに導入することによりエチレン低感受性ミヤコグサの作出を試みたところ、T1,T2世代に根粒が密に着生するHypernodulationの表現型が表れた。
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