研究概要 |
本研究の目的は、(1)ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkaniiの生産する天然のエチレン生合成阻害剤リゾビトキシン(RT)に注目し、その生合成経路を生化学・遺伝学的に解明すること、(2)そのリゾビトキシン生産遺伝子群の導入によってリゾビトキシン生合成能を付与した有用細菌を作出することにある。平成13年度は、以下のような研究成果が得られた。 昨年度明らかにしたB.elkaniiのリゾビトキシン生合成系のkey遺伝子であるrtxA, rtxC遺伝子をpET発現ベクターに導入し、大腸菌内でRTXA,RTXC His-tagタンパクの発現を行った。RTXCタンパクは可溶化したが、RTXAタンパクはinclusion bodyとなった。今後、これらの発現タンパクの酵素活性を検討するとともに、導入菌におけるRTXA, RTXCタンパクのWestern解析を行うためにこれらのタンパクを尿素変性後ニッケルカラムで精製し、ウサギ抗体を調製する予定である。 カナマイシンプロモーターの下にリゾビトキシン生合成遺伝子群導入した広宿主域プラスミドpLAFR-RTを作成し、Agrobacterium tumefaciens EHA101株に導入した。今後これらの株のリゾビトキシン合成能力の評価を行い、リゾビトキシンを合成していれば、感染実験のためにバイナリーベクターpIG121Hmをさらに導入する予定である。メロンの子葉片を材料に、A.tumefaciens菌密度と遺伝子導入効率の解析を行い、菌密度が一定濃度以上になると遺伝子導入効率が頭打ちになることが明らかになった。これは葉片がアグロバクテリム菌の感染を何らかの方法で阻止していることを示唆するものである。 昨年度作成した異種変異エチレンレセプターCm-ERS1/H70Aを導入したマメ科モデル植物ミヤコグサの感染過程を野生型と比較したところ、Cm-ERS1/H70A導入植物において感染糸形成が明らかに促進されていた。また、エチレン感受性の顕著な低下が期待される、レシーバードメインを持つCm-ETR1/H69Aを導入したミヤコグサの作製に成功した。
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