研究概要 |
メタノール資化性酵母Candida boidiniiのメタノール誘導性プロモーターのうち、特に強力なアルコールオキシダーゼ遺伝子(AOD1)とジヒドロキシアセトンシンターゼ遺伝子(DAS1)のプロモーターについて、メタノール誘導性に必要な領域(cis-element)を特定した。AOD1プロモーターはメタノール、ホルムアルデヒドとその代謝産物であるグリセルアルデヒド、ジヒドロキシアセトンによって誘導されるが、メタノール、ホルムアルデヒド、ジヒドロキシアセトンに応答する領域と、グリセルアルデヒドに応答する領域が別々に存在することがわかった。一方、DAS1プロモーターはメタノールとホルムアルデヒドによって誘導されるが、メタノールとホルムアルデヒドの両方に応答する領域を特定した。このような誘導基質と応答領域の違いが、両プロモーターの発現順序の違いとして現れ、アルコールオキシダーゼによって生じるホルムアルデヒドの蓄積を最小限にとどめるように巧妙に調節されていると考えられる。また、Pichia methanolicaではメタノールに対する親和性の異なる2つのアルコールオキシダーゼアイソザイムの発現を調節することにより、ホルムアルデヒドの蓄積を最小限にしていることが明らかとなった(J. Biosci. Bioeng.,91,225)。またメタノールによって誘導されるペルオキシソーム膜タンパク質(Pmp20)とカタラーゼが、メタノール代謝時の活性酸素種の除去に重要な役割を果たしていることを明らかにした(J. Biol. Chem.,276,14279;J. Bacteriol,183,6372)。 またAOD1やFDH1プロモーターを利用した異種有用タンパクの発現を行い、AOD1遺伝子破壊株やプロテアーゼ欠損株などを宿主として異種タンパクの高発現に成功した(Biosci. Biotechnol. Biochem.,65,627;同,66,628;J. Chem. Eng. Japan,印刷中)。
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