研究概要 |
本研究では、メタノール誘導性プロモーターの分子機構の解明や有用酵素の大量発現系の確立に関する研究を行い、プロモーター機能を有機的に統合・活用し、実生産への道を開くことを目的とした。 1.メタノール誘導性プロモーターの評価 メタノール資化性酵母Candida boidiniiのアルコールオキシダーゼ遺伝子(AOD1)、ジヒドロキシアセトンシンターゼ遺伝子(DAS1)、ギ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(FDH1)など5つのメタノール誘導性遺伝子プロモーターの強さを比較したところ、DAS1,AOD1,FDH1プロモーターの順に強力であった。またDAS1プロモーターの誘導はAOD1プロモーターの活性化に先行して起こり、これがアルコールオキシダーゼにより生じるホルムアルデヒドの蓄積を最小限にするための調節機構であると推察した。 2.AOD1,DAS1プロモーターのcis-elementの特定 メタノールの代謝をブロックした遺伝子破壊株を用いるなどして、AOD1プロモーターがメタノールやホルムアルデヒドに加えて、その代謝産物であるグリセルアルデヒドやジヒドロキシアセトンによって活性化されること、DAS1プロモーターはメタノールとホルムアルデヒドによってのみ活性化されることを明らかにした。またDAS1プロモーターにおいてメタノール応答領域を特定し、この領域に特異的に結合するタンパクの存在を示した。AOD1プロモーターにおいては、メタノール応答領域とは別にグリセルアルデヒド応答領域が存在した。 3.異種タンパク高生産技術の開発 AOD1,FDH1のプロモーターを用いて、宿主や培養条件、発現産物の蓄積の場を最適化することにより、多数の異種有用タンパクの高生産に成功し、有用タンパクの生産系と培養系を確立した。
|