研究概要 |
本研究は化学的脱ハロゲン化と微生物分解を組合わせることにより、効率的に環境汚染物質である有機塩素化合物を分解処理する方法を開発することを目的とする。本年度は地下水、土壌を深刻に汚染しているテトラクロロエチレン(PCE)を対象に以下の研究を実施した。 (1)PCE脱クロル化嫌気性菌に分離 PCEで汚染された土壌からPCEを強力に脱クロル化する絶対嫌気性菌Desulfitobacterium sp.Y51株を分離した。本菌株は0.6μMの低濃度から飽和濃度の960μMの高濃度のPCEを短時間にcis-1,2-ジクロロエチレン(cis-DCE)へと脱クロル化した。PCEの他にトリクロロエチレン(TCE)、ヘキサクロロエタン、ペンタクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタンにも作用し、いずれの化合物からもcis-DCEが生成した。しかし、cis-DCEには作用せず、これが最終産物として蓄積した。 (2)cis-DCEの微生物分解 cis-DCEはTCEとともにメタン酸化細菌やトルエン資化菌の産生するオキシグナーゼにより分解される。本研究では以前にビフェニルジオキシゲナーゼとトルエンジオキシグナーゼの大サブユニットを交換したハイブリッド酵素TodC1-BphA2-BphA3-BphA4がTCEおよびcis-DCEを効率よく分解することを明らかにした。本研究でこの遺伝子クラスターを染色体に組み込んだPseudomonas pseudoalcaligenes株はトルエン資化菌よりはるかに速やかにcis-DCEを酸化分解することを明らかにした。 (3)PCE脱クロル化嫌気性菌とcis-DCE分解菌を組み合わせたPCEの完全分解 上記PCE脱クロル化嫌気性菌Y51株とcis-DCE分解ハイブリッド菌の静止菌体を用いてまず、PCEの嫌気的脱クロル化ついで生成したcis-DCEの酸化分解を行うことでPCEの完全分解を実証した。
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