優れた遺伝的背景を持つ新規NIDDMモデルマウスの開発と、その糖尿病遺伝子の解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11556024
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 堀尾 文彦 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (20165591)
• 研究分担者: 池上 博司 大阪大学, 医学部, 助手 (20221062) ; 西村 正彦 名古屋大学, 医学部, 教授 (20073661)
• キーワード: 糖尿病 / 疾患感受性遺伝子 / 高インスリン血症 / 高血糖 / 糖糖能 / QTL解析 / リコンビナント・インブレッド系統

研究概要

(1)新規な2型糖尿病モデルマウスとしてのSMXA-5系統の糖尿病形質の解析
SMXA-5系統は、2ヶ月齢前後から軽度の肥満、耐糖能異常、高インスリン血症を示した。SM/JとA/J系統ではこれらは全て、正常域にあった。SMXA-5のグルコース誘導性インスリン分泌能は、両対照系統と大きな差異は観察されなかった。
SMXA-5系統は皮下脂肪組織、内臓脂肪(白色脂肪)組織、肩甲骨間褐色脂肪組織の重量が最も大きく、SM/J系統が一番小さかった。
これらの3系統について2ヶ月齢、3ヶ月齢、5ヶ月齢の各組織のUCPのmRNA発現レベルを比較したところ、肩甲骨間褐色脂肪組織のUCP1 mRNAレベルは3系統で大きな差はなかった。副睾丸脂肪組織のUCP2 mRNAレベルはこの脂肪組織の重量と呼応して、SMXA-5,A/J,SM/Jの順に高かった。興味あることに、骨格筋(ヒ腹筋)のUCP3 mRNAレベルは、SM/Jに比べてSMXA-5とA/Jでは顕著に低かった。
(2)SMXA-リコンビナント・インブレッド(RI)系統マウスを用いた肥満および糖尿病形質を支配する遺伝因子の染色体マッピング
21系統のSMXA-RI系統(各系統10匹ずつ)の3カ月齢、5カ月齢の肥満度、脂肪組織重量、耐糖能を測定した結果と、各系統のStrain Distribution Patternsとを用いてQTL(量的遺伝子座)解析を行った。その結果、肥満度に関しては第1および6染色体のAアリルが肥満促進作用を有していることが示唆された。また、耐糖能に関しては、第2および18染色体のAアリルと、第10染色体のSMアリルが耐糖能増悪作用を有していることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ohno,T.,Horio,F.(第二著者)その他: "Fatty liver and hyperlipidemia in IDDM (insulin-dependent diabetes mellitus) of streptozotocin-treated shrews."Life.Sci.. 66. 125-131 (2000)
• [文献書誌] Anunciado,R.V.P.,Horio(第四著者)その他: "Developping a new Model for non-insulin dependent diabetes mellitus (NIDDM) by using the Philippine wild mouse, Mus musculus castaneus."Exp.Anim.. 49(1). 1-8 (2000)
• [文献書誌] Anunciado,R.V.P.,Horio,F.(第二著者)その他: "Characterization of hyperinsulinemic hecombinant inbred (RI) strains (SMXA-5 and SMXA-9) derived from normoinsulinemic SM/J and A/J mice."Exp.Anim.. 49(2). 83-90 (2000)
• [文献書誌] Anunciado,R.V.P.,Horio.F.(第六著者)その他: "Distribution of body weight, blood insulin and lipid levels in the SMXA recombinant inbred strains and the QTL analysis."Exp.Anim.. 49(3). 217-224 (2000)