研究課題
前年度に作成したロールプレス機を用いて、木材の横圧縮試験を行った。ロール圧縮によって、木材に発生する特徴的な破壊(不都合)は、次のように整理された。A.わに口破壊材料の最後尾がロール入り口直前で2〜3枚の板にはく離する破壊で、金属の板圧延においても一般的に認められている。これは、ロール圧延部周辺に発生する厚さ方向の引張応力によるものである。破壊は、すべて年輪界(晩材から早材への境界)において発生する。B.縦割れ放射組織に沿って繊維方向に発生する。厚さ方向への大変形に伴って、その直角(幅)方向に発生する引張応力によると考えられる。破壊は、必ず木表側から発生するが、加工材が分割される場合もある。C.表面割れロール通過後の表面全域に、繊維と直角方向の短い断続的な表面割れが現れる。発生頻度は本表に比べ木裏で顕著である。これは、ロール圧延時に材料表面付近に発生する引張ひずみに起因すると考えられる。D.幅反り円弧状に層構造(年輪構造)を有する木材を圧密化する場合、変形回復に伴って、本表が凹となる反りが発生する。ロール通過後の変形回復に伴って、同様の機構で幅反りが発生すると推察される。E.縦反り木材は、木表側と木裏側では、その年輪構造に起因して、横圧縮変形能に差が生じる。このため、上下ロールの圧入量に差が生じ、これによって縦反りが発生する。F.加工材内部の層はく離ロール圧延過程において、加工材のロール接触部から数mm内部に、断続的な層はく離が観察される。圧密によってこの破壊は消滅するため定量化は困難であるが、水平せん断応力によるものと推察される。