研究分担者 |
青海 忠久 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (10144338)
上野 正博 京都大学, 農学研究科, 助手 (30160196)
林 勇夫 京都大学, 農学研究科, 教授 (70026540)
津崎 龍雄 日本栽培漁業協会, 場長(研究職)
富永 修 福井県立大学, 生物資源学部, 助教授 (90264689)
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研究概要 |
本年度は昨年に引き続き,福井県和田浜と京都府由良浜の2つの成育場に人工種苗を放流し追跡飼査を行った.これまでの調査や知見から,和田浜ではヒラメ稚魚の主要な餌生物であるアミ類現存量は低く,由良浜では高いと想定される.2001年5月21日に和田浜に4万尾(平均全長59.21mm),5月29日に由良浜に9万尾放流した(平均全長62.11mm).和田浜ではアミ類の1曳網当たりの湿重量が0.3g前後であったのに対し,由良浜では約4gと餌環境ははるかに優れていると考えられた.両成育場ともに人工種苗は放流後1週間以内に急激に採集されなくなったが,比較的大型で放流したため放流1カ月後まで採集され続けた.その減少傾向に両成育場間で大きな違いは認められなかった.再捕された人工種苗の胃内容物を分析したところ,両成育場間に明瞭な差異が認められた.和田浜に放流された人工種苗はアミ類をほとんど摂食しておらず,その他の甲殻類(カニ類やスナモグリの1種)を摂食していた.一方,由良浜では調査期間を通してアミ類,とりわけAcanthomysis属が胃内容物の大部分を占めた.また,和田浜では放流後1週間以上にわたって人工種苗が高い空胃個体率を示したのに対し,由良浜では放流3日後には空胃個体はほとんど認められなくなった.したがって,成育場の餌環境の違いは胃内容物組成や摂食状態に明確に反映され,さらに放流後の成長にも影響することが明らかとなった. また,和田浜汀線域における潜在的捕食者と推定されたキンセンガニの出現やヒラメ稚魚の捕食をmtDNAを用いて検討した.
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