21世紀は、地球環境への負荷の少ない持続的発展可能な「循環型社会」に変えていくことが求められている世紀である。すなわち、自然環境の破壊や人間の経済行為による地球温暖化など、人類存続の基盤である地球環境が損なわれるおそれが深刻になり、それを防止しなければならないということが世界共通の認識となっている。これまでの経済合理主義のみに偏った大量生産、大量流通、大量消費、大量廃棄の経済活動、いわゆる「一方通過型社会」の見直しが求められている。 本研究課題である「食品流通における環境保全型物流システムの導入と展開に関する研究」においても、上述の視点から研究を実施してきた。 特に、平成14年度では、これまでの研究の補足として、青果物物流において、第1に、特に国内小売業における環境保全型物流に積極的に取り組んでいる小売業の取組実態を調査した。その結果、近年、国内大手小売業の物流において、従来のダンボー容器中心から急速に再利用可能なリターナブル容器への転換が進みつつあり、さらには、近年、陳列什器の改良によるリターナブル容器での陳列販売が模索されつつあることが明らかとなった。また、販売形態も従来の個装形態からばら(はだか)販売も積極的に導入していこうとする動きがあることも明らかとなった。第2は、こうした取組の先進国であるEU諸国の物流実態の調査を実施した。EU諸国では、リターナブル容器を利用した物流や陳列販売が一般的であり、販売方法も特にドイツ、フランスなどでは、計量機を使用した消費者自身による計量販売が中心となっていることが明らかとなった。こうした背景には、物流パレットや容器のモジュール化、あるいは制度の整備があることが明らかとなった。わが国への環境保全型物流システムの導入や展開のためにも、そうした視点での取組が早急に求められている。
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