本研究の出発点は、電気分解陰極水(以後、陰極水)には、活性酸素除去能力があるという論文である。初年度にはそのことを追実験するとともに、陰極水による光阻害抑制効果の有無を調べた。なぜなら光阻害は活性酸素により引き起こされることがわかっているからである。しかし、陰極水の活性酸素除去能力も阻害抑制効果も確認できなかった。逆に、陰極水は活性酸素生成を促進することがESRの解析から推定された。陰極水が活性酸素生成を促進するならば、陰極水による栽培で、一種の予防注射的な効果(陰極水による栽培で作物に活性酸素耐性が形成される効果)が期待される。そこで、本年度は、陰極水を栽培養液に用いる、あるいは散布することよる光阻害耐性獲得の可能性を調べるための実験を行った。供試作物はサラダナとし、栽培方式は養液栽培とした。 まず、陰極水で栽培した移植後20日のサラダナを光阻害を誘発する強光下におき、PAMで光量子収率を測定した。その結果、対照区と比較して有意な差は認められなかった。次に、陰極水を50倍、500倍、1500倍に希釈して同様に実験した。その結果、いずれの区も、対照区と比較して有意な差はなかった。 以上の結果から、陰極水にはサラダナの光阻害を抑制する効果も、サラダナに光阻害耐性を与える効果も期待できないことが示された。
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