研究概要 |
東京や福岡市などの大都市はここ100年間で2℃以上もの昇温を示し,ヒートアイランド現象が顕著となっている.地球の温暖化傾向がある今,地球に過剰な負荷をかけることは抑制しなければならない.日本のような多湿地帯では,都市の原風景は植生地であった.すなわち,都市のあるべき環境を環境倫理の立場からみれば,植生地並の環境に戻すことである.都市は植生地に対して構造物による蒸発の低減とエネルギーの集中使用に最大の相違点がある.前者に注目すれば,都市構造物に蒸発機能を持たせばよいことになる. そこで,保水性セラミックスを倉庫の屋根面に敷設して夏季の昇温抑制について検討した.夕方の散水により翌日真昼の日射量が最強時刻において,屋根表面温度で20℃もの降温を実現できた.このときの水分蒸発量は0.75mm/hrであり,この気化潜熱が機能した結果である.生産環境面では畜舎の改善を図るため,保水性セラミックスとトタンの屋根とを設置し,ヤギ自身に判定させたところ,暑熱時には前者に3頭後者に1頭滞在しており明確な差を示した.熱放射低減効果による. つぎに,福岡市の都心にある植栽ビルを対象として暑熱緩和について観測した.このビルは南面を段々畑に模したスタイルで約38,000本の植物が植え付けられた屋上緑化型である.この場合も夏季真昼にコンクリート表面に比して,植栽部は30℃もの降温を示した.培地の水収支(→根の吸水量),植栽部表面の熱収支から,潜熱転換量が大きいことが効果の主因であることが示された.これらの熱的変化の人体への影響評価を行った.熱放射の向きがそれまでとは全く逆となって,夏季においてすら人体からの放出を招いており,好影響を与えることが明らかにされた.
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