研究課題/領域番号 |
11556051
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内藤 邦彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20188858)
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研究分担者 |
菊地 和弘 農水省, 農業生物資源研究所, 主任研究官
山内 啓太郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (70272440)
東條 英昭 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20041668)
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キーワード | ブタ卵 / 体細胞クローン / 核除去 / 核移植 / MPF / MAPK |
研究概要 |
本研究の当初の目標は体細胞クローンブタを作出することであったが、昨年3つの研究グループから体細胞クローンブタの作出に成功したと報告された。そこで本年度は、この作成を第一目標とするのではなく最適な方法を探ること、さらにその過程で胚の発生を左右する要因、具体的には核移植胚の卵割制御因子の動態を解析していくことに主眼を置いた。 クローン作出過程では成熟卵からスピンドルを除去し体細胞の核を注入するが、発生に重要な役割を果たす細胞分裂期促進因子(MPF)やMAPキナーゼ(MAPK)はスピンドルに局在すること、また体細胞核にはこれらが存在しないことが培養細胞や無脊椎動物の卵で報告されている。そこでスピンドルの除去に伴ってこれらの因子を共に除去してしまう可能性について検討した。その結果、MPFは極わずかしかスピンドルに局在しておらず、この除去は胚発生に影響しないこと、一方MAPKは約20%がスピンドルに局在しており、発生に対する影響が無視できないことを明らかにした。改善策として体細胞注入時にMAPKを共に注入することが考えられる。 次に核置換されて成熟卵内で凝縮した体細胞の染色体にこれらの因子が局在してくるかを検討した。その結果、チューブリンが集合したものに関してはほぼ全てにMPF,MAPKが集合してくるが、チューブリンの集合が見られないものではMPF,MAPK共に集合しないことが明らかとなった。またチューブリンが集合したものの割合は卵活性化後に前核を形成する率と極めて良く一致しており、チューブリンが集合したもののみがその後の発生を起こし得ることが示唆された。 以上、今回の結果は体細胞核による再構築胚における卵割制御因子の動態を調べた初めての物であり、今後のクローン胚の発生を改善していく上での基礎データとなるものと期待される。
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