黒毛和種去勢牛30頭を育成期粗飼料多給/肥育期粗飼料多給(I)区、育成期粗飼料多給/肥育期濃厚飼料多給(II)区、育成期濃厚肥料多給/肥育期粗飼料多給(III)区、育成期濃厚飼料多給/肥育期濃厚飼料多給(IV)区育成期著しい濃厚飼料多給/肥育期濃厚飼料多給(V)区に割り当てた。供試牛を各区3頭ずつ14、26ヶ月齢でと殺し、腎臓周囲脂肪、皮下脂肪、最長筋内脂肪組織を採取した。これらをオスミウム固定後にコールターカウンターを用いて、脂肪細胞の細胞径を測定した。腎臓周囲脂肪組織において14ヶ月齢の脂肪細胞径はV区と比較し、他の区で小さくなった。一方、26ヶ月齢では全ての区で細胞径の減少が認められ、いずれの区間においても差が認められなくなった。皮下脂肪組織の細胞径は14ヶ月齢では給与飼料の影響を受けなかった。一方、III区では26ヶ月齢では細胞径が減少する傾向が認められ、V区と比較し明らかに小さかった。筋肉内脂肪組織の細胞径は14ヶ月齢では給与飼料の影響が認められなかった。I、IV、V区は14ヶ月齢時と26ヶ月齢時で細胞径に明らかな差は認められなかったが、II、III区では減少傾向を示した。その結果、II、III区の細胞径はI区と比較し小さかった。以上の結果から、特定の時期および部位の脂肪細胞の大きさは摂取飼料の影響を受けることが示された。強力な脂肪細胞分化誘導物質であるチアゾリジンジオンをウシ筋衛星細胞の培地に添加しても、筋分化に影響を及ぼさず、また脂肪細胞化を誘導しなかった。ラットで認められている筋芽細胞から脂肪細胞へのtransdifferentiationはウシでは生じない可能性が示唆された。
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