研究課題/領域番号 |
11556053
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
矢野 秀雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (20026587)
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研究分担者 |
河内 浩行 京都大学, 農学研究科, 助手 (00324666)
松井 徹 京都大学, 農学研究科, 助教授 (40181680)
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キーワード | ウシ / 脂肪前駆細胞 / NOS / NO / NOC18 / ODQ / 8-bromo cGMQ / PPARγ |
研究概要 |
ウシの初代脂肪前駆細胞培養系ではNOS阻害剤により分化が促進されたことから、NOが脂肪細胞分化に影響を及ぼすことが示唆された。また近年、ヒトやラットの脂肪組織においてNOSの存在が明らかとなり、産生されたNOにより脂質代謝が調節されている可能性が示唆されている。ウシの脂肪組織においても、脂肪組織から産生されるNOがパラクリン的に脂肪前駆細胞分化に影響を及ぼしている可能性が考えられる。そこでまずウシの脂肪組織におけるNOSの発現を検討した。肥育牛の筋間脂肪組織から脂肪前駆細胞を含む間質脈管系細胞群を調整し、iNOSタンパクの発現を確認した。さらに黒毛和牛の筋肉組織、脂肪組織、間質脈管系細胞いずれの部位においてもiNOS遺伝子発現が確認できた。これにより、脂肪組織から産生されるNOがパラクリン的に脂肪細胞分化に影響を及ぼす可能性が示唆された。 また脂肪前駆細胞株である3T3-L1細胞を用いて、NOが脂肪細胞分化に及ぼす影響とそのメカニズムを検討した。3T3-L1細胞を分化誘導すると同時に培地にNO供与体であるNOC18、グアニル酸シクラーゼの特異的阻害剤であるODQ、膜透過性のcGMPアナログである8-bromo cGMPを添加し培養した。結果、NOC18は濃度依存的に脂肪細胞分化を抑制したが、ODQの添加はNOC18による脂肪細胞分化抑制効果を妨げなかった。さらに、8-bromo cGMPは脂肪細胞分化に影響を及ぼさなかった。このことから、NOは脂肪細胞分化を抑制するが、この現象にはNOによるcGMPの上昇は関与しないことが示唆された。またNOC18添加の際PPARγ2タンパク発現量に変化は見られなかったが、脂肪細胞分化の後期マーカーでありPPARγに直接反応することが知られているaP-2遺伝子の発現量はNOC18の濃度依存的に抑制された。このことから、NOは脂肪細胞分化の過程においてPPARγの下流に影響を及ぼしていると考えられる。
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