研究概要 |
褐毛和種の軟骨形成不全症は、四肢短小、異常歩行を主徴とする遺伝性疾患であり、常染色体単一劣性の遺伝子に支配されるが、その原因遺伝子は不明である。現在,キャリアー個体を効率よく検出する方法を確立し、集団より疾患の原因遺伝子を除去することが緊急の課題となっている。そこで本研究は、ウシの軟骨形成不全症の疾患原因遺伝子を同定し、さらにキャリアー個体を効率的に検出することのできる遺伝子診断法を確立することを目的として行われてた。 本疾患のキャリアである単一の種雄牛に由来する半兄弟家系を用いた連鎖解析により,本疾患の原因遺伝子の染色体マッピングを行った。結果,本疾患の原因遺伝子はウシ第6染色体遠位端に存在するマイクロサテライトマーカーBM9257とBP7にはさまれた約10cMの領域に存在することが明らかとなった。 疾患原因遺伝子が存在する染色体領域上の既知の遺伝子より候補となる遺伝子を特定するためには,多くの機能的遺伝子の位置が明らかとされていることが必要とされる。そこで本研究では種間で保存された配列をウシの染色体上に位置づけることにより比較染色体地図を作成し,ウシの当該領域に対応するヒト,マウスの染色体上の位置を特定し,そこから候補遺伝子を特定することを試みた。具体的には,当該領域に存在することが予測される機能的遺伝子を,放射線雑種細胞法(RH法)によりウシ染色体地図上に位置づけ、33の機能的遺伝子と32のマイクロサテライトマーカーよりなるウシ第6染色体の正確なRH地図を構築した。このRH地図をヒト染色体地図とを比較したところ、ウシ第6染色体は全領域にわたってヒト第4染色体と相同性のあることが明らかとなり、ウシの疾患原因遺伝子が存在する領域に対応するヒト染色体上の領域からいくつかの候補遺伝子を特定した。
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