研究課題
基盤研究(B)
初年度は、従来のアクチン重合阻害剤と共通化学構造を持たない新規アクチン重合阻害剤ペクテノトキシン2(PCTX-2)のアクチン重合阻害作用機序について検討すると共に、既に化学構造とアクチン切断作用機序が明らかである、ミカロライドB(ML-B)とサイトカラシンD(Cyt-D)のジステンパーウイルス感染への影響について検討した。(1)ペクテノトキシン2のアクチン重合阻害作用機序PCTX-2は、血管平滑筋由来A7r5細胞の細胞形態には大きな変化を与えなかったが、アクチンを主成分とするストレスファイバー形成を抑制することが示唆された。さらに、単離骨格筋アクチン標品を用いたアクチン重合への影響を検討したところ、PCTX-2にはML-Bのようなアクチン線維を切断する作用はなく、アクチンモノマーと結合してこれを隔離することによりアクチン繊維の脱重合を生じることが明らかにされた。さらに、Cyt-Dのようなアクチン繊維の末端に結合して新たなアクチンモノマーの結合を抑制するCapping機構も持たないことが示唆され、PCTX-2が新規のアクチン脱重合剤であることが明らかとなった。(2)ML-BおよびCyt-Dによるジステンパーウイルス感染への影響イヌジステンパーウイルス(CDV)の感染・増殖・放出系を測定するために、腎上皮細胞由来のVero細胞を用いたウイルスタイター実験を行った。CDV感染前あるいは感染1時間後にML-B(0.3μM)をVero細胞に処置すると、その後のCDVの増殖数はいずれも有意に抑制され、ML-B投与時期による差は認められなかった。また、Cyt-D(1μM)も同様の成績を示した。これらの成績からアクチン重合阻害剤がCDV感染・増殖機構の感染以降のステップに作用してウイルス増殖を抑制することが示唆された。
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