研究概要 |
本研究は,植物細胞の分化・成長に係わると推定される糖蛋白質糖鎖の生理機能の詳細を解明するとともに,それら糖鎖のシグナリング機能を利用した植物成長コントロール技術開発の基礎を確立すること目的とする。 本年度は,トマト及びタバコ培養細胞より精製したエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼのリジルエンドペプチダーゼ消化物からペプチド断片を精製後,それらのアミノ酸配列を明らかにした。次いで,それらの配列をもとに数種のプローブを作成後,ゲノム及びcDNAを鋳型にしてPCRにより約1500 bp及び400 bpの単一バンドを得ることに成功した。現在,コンピテントセルを用いて発現系の確立を行っている。昨年度,アラビドプシス由来のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ遺伝子のクローニングをほぼ完了していたが,今年度,大腸菌による発現系により,弱いながらも活性のある酵素の大量生産に成功した。 更に今年度は,植物細胞内に存在するハイマンノース型の遊離N-グリカンの分解に関与すると考えられる細胞質α-マンノシダーゼを,銀杏種子より単一に精製することとに成功した。本酵素はpH5.5付近に至適pHを有し,SDS-PAGEにより約120kDa程度の分子量を持つサブユニット2分子からなるダイマー構造であることが示唆された。次いで,種々の蛍光標識N-グリカンを基質として種々の酵素学的性質を解析した結果,本酵素は(1)α1-2マンノース残基を有するハイマンノース型糖鎖に対して強い活性を有すること,(2)金属イオンの種類によって基質特異性に違いが生じることが明らかになった。
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