研究概要 |
脳機能改善薬のin vivoでの作用:新規Na/Ca交換系阻害薬(SEA400)の脳傷害保護作用をラット脳虚血モデルで検討し、これが梗塞巣の縮小を起こすことを見い出した(J. Pharmacol. Exp. Ther.,298,249-256,2001)。また更に同化合物が、熱損傷により惹起された脳浮腫(脳水分量の増加)を抑制すること、この抑制がアストログリアと血管内皮細胞間に形成される血液脳関門の保護に基づくことを明らかにした。アルツハイマー病改善薬として開発されたT-588がERK(extracellular-regulated protein kinase)活性化を介する機構で培養アストログリアに対し傷害からの保護作用を示すことが明らかになった(Eur. J. Pharmacol,399,1-8,2000)。T-588は、ラットへの腹腔内投与により脳内ERK活性を増加させることが示された。免疫組織化学は、このERK活性化が神経細胞に由来することを示した。これらの結果は、SEA400およびT-588の抗脳障害薬としての可能性を示唆する。 グリア細胞死に関する機構:血清除去による培養ミクログリアのアポトーシスに、Baxタンパクの発現が関与していることを明らかにした(Jpn. J. Pharmacol.,83,351-354,2000)。また傷害によるアストログリアのアポトーシスに、ミトコンドリアの膜電位の低下が関与することを明らかにした。そして幾つかの薬物(T-588、イブジラスト、SEA400)がこのアストログリアのアポトーシスを抑制することを見い出し、これらの働きにミトコンドリアの保護が関わることを明らかにした(Br. J. Pharmacol.,133,841-578,2001;J. Pharmacol. Exp. Ther.,298,249-256,2001).またミトコンドリア機能の保護に関わる細胞内シグナルとしてcGMPを介した機構の存在を明らかにした(J. Biol. Chem.,276,48093-48099,2001)。
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