ヒトのLOX-1の遺伝子のクローニングを行い、LOX-1の遺伝子構造を明らかにするとともに、12番染色体の短腕に遺伝子が位置することも明らかにした。また、LOX-1の発現調節について検討を行い、リガンドである酸化LDLや炎症性のサイトカイン、高血圧・糖尿病・高脂血症のような病態下で発現が亢進することがわかった。 LOX-1の機能については、内皮細胞における酸化LDLの作用点としてLOX-1が活性酸素の産生やNO産生の抑制に重要であることも示唆された。また、LOX-1が活性化血小板や白血球との相互作用を媒介することも明らかになった。 病態におけるLOX-1の意義については、LOX-1を血管特異的に発現させたトランスジェニックマウスとアポE欠損マウスとの交配により得たマウスの解析を行い、血管へのLOX-1の過剰な発現により酸化LDLの血管への作用が増強し、動脈硬化が増悪することを見出した。また、マクロファージの血管への浸潤も亢進していることが明らかとなった。このことから、LOX-1が動脈硬化促進分子として生体内で機能することが明らかとなった。 さらに、動脈硬化以外の疾患の解析も行い、エンドトキシンによるブドウ膜炎や、ザイモザンによる関節炎モデルにおいてLOX-1機能の抑制はこれらの炎症を抑制し、臓器障害を軽減した。また、心筋梗塞モデルにおいてもLOX-1機能の抑制は梗塞巣の拡大を抑制した。これらのことより、種々の病態においてLOX-1機能制御が治療に役立つ可能性が示唆された。
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