がん細胞の浸潤や転移において、Rho低分子量GTP結合タンパク質やアクチン細胞骨格を介するシグナル伝達経路の異常が重要な役割を果たしている可能性が出てきている。一方、薬剤のスクリーニング系の開発には、培養が比較的簡単である微生物が有用である。本研究では、出芽酵母のRhoやアクチン関連蛋白質の遺伝子変異株を用いて、あるいは、出芽酵母において動物細胞のRhoやアクチン関連蛋白質の遺伝子の発現系を構築し、Rhoとその関連蛋白質の機能修飾物質のスクリーニンング系の開発を試みた。これらの目的を達成するためには、Rhoの活性制御機構と作用機構を明らかにすることが重要であり、私共は本研究において以下の成果を得た。 (1) Rhoの作用機構の解析:私どもはRhoの標的蛋白質としてフォルミンファミリーに属するBNI1とBNR1を単離している。BNI1と遺伝的に相互作用する遺伝子を単離し、ダイニン微小管モーターを制御するダイナクチンのコンポーネントの遺伝子変異を同定した。この成果は、BNI1が微小管系の機能も制御することを示している。また、BNR1がSMY1キネシンモーター様タンパク質と相互作用し、細胞の極性形成を制御することを明らかにした。 (2) 酵母における、Rho関連の動物遺伝子発現系の構築:Rho関連の動物遺伝子であるRhoA、Rho GDI、等々を酵母細胞に発現させ、Rho 系の機能修飾物質のスクリーニング系を構築した。
|