研究概要 |
本研究で我々は、主として以下にまとめる成果を得た。 1,HIV-1Gagの機能。HIV-1Gagはウイルス複製サイクルの全般にわたって重要な役割を果たす。複製初期の脱殻/逆転写に欠損を持つGag変異体には宿主細胞依存性の複製能を示すものがあり、この過程に宿主因子が関与することが明らかとなった。また、初期機能に欠損を持つGag変異体の多くが野性株の複製を強力に阻害した。Gag組換え体(SHIV)や変異体(C3a,M3b,N1a,N1b,C6b等)を利用することにより、動物モデルや、それを用いた種々の抗HIV療法の検証への展望が開かれた。2,HIV-1Envと宿主因子。Env gp41変異体の解析から、HIV-1Envのウイルス粒子の取込みには宿主因子が関与していることが明らかになった。3,HIV-1Vifの機能。Vifはウイルス複製サイクルの後期に作用する。多数のVif変異体の解析から、Vifの機能は産生細胞依存性であるばかりでなく、標的細胞にも依存することが示された(論文投稿中)。Vifの効果はウイルス複製初期にあらわれる。4,HIV-1Nefの機能。Nefはウイルス複製サイクルの後期に作用する。Nefは培養細胞でのウイルス感染価やCD4down-regulationとは無関係にMHC-Iをdown-regulateする活性があることが明らかになった。5,HIV-1Vprの機能。HIV-1/VSV-Gシュードウイルスを用いた解析から、Vprに強いアポトーシス誘導能があることを明らかにした。しかし、抗アポトーシス活性は認められなかった。 以上、本研究により、HIV-1複製機構の詳細が明らかにされた。また、動物モデルシステムによってHIV-1複製とその阻害を検討することの重要が強く示唆された。
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