研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染、複製過程、細胞外への放出機構は、効率のよいin vitro感染系がないために、全く明らかになっていない。本機構を解析するために、HCV感染性cDNAクローンを樹立し、肝細胞で発現させ、ウイルス粒子成熟過程および細胞外への放出機序およびこれに関わる因子および再感染過程を解析することを目的とした。チンパンジーにHCV感染者の血清を接種し、PCR価が高く、かつ感染価との差の小さい検体を選びHCV全遺伝子のクローニングを行った。HCV全遺伝子のcDNAあるいはRNAを細胞にトランスフエクションし、HCV蛋白質を発現させた。遺伝子複製効率についてはRTD-PCR法により、粒子形成の有無については培養上清の密度勾配遠心および免疫電子顕微鏡法により検討を行った。さらにこの培養上清を用いて再感染を行った。これらの検討から、3X領域の有無が細胞内での遺伝子複製効率に関与していることが示された。3X領域を持っている方が10-100倍以上効率が高くなる傾向をしめした。また、HCVcDNAを導入発現した細胞内の免疫電顕による検討から、細胞質内に50-60nmのウイルス様粒子が認められた。培養上清を蔗糖密度勾配遠心にかけ、分画のコア蛋白質量およびRNA量を測定したところ、1.10、1.25の密度にピークが観察され、免疫電子顕微鏡による検討から50-60nmの抗エンベロープ抗体と特異的に反応するウイルス様粒子が認められた。培養上清中には108-9copy/mlと多量のウイルス粒子が産生され、これを用いてin vitroおよび小型原猿類のツパイに感染実験を行ったところ効率よく感染、複製をした。HCV全長遺伝子より産生されたウイルス粒子が再感染増殖性を示したことから、reverse geneticsによるHCV遺伝子機能及び宿主因子との相互作用の解析が可能となった。
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